モトイ(MOTOI)
075-231-0709
完全予約制京都府京都市中京区富小路通二条下ル俵屋町186
ランチ 12:00~13:00(入店時間)
ディナー 18:00~19:00(入店時間)
定休日水曜日・木曜日
2012年1月31日open
モトイさんへ伺うのが6年ぶり。お客様はツアーでご案内したり、ご紹介したりは結構コンスタントですが、そうですね~いくら名店でも6年もたてば内容がいろんな意味で変わるものですが、全く同じという店はセレブ利用のお店ほどない感じがします。
シェフの考えや方向性は変わる部分が大なり小なり必ずある。それを調べるために実は今年に入ってすでにまわったお店を訪問しています。その内の一軒がこちらでもありますね。
いつものように、MOTOIさんはしっかり出迎えてくれます。今回伺ってスタッフもかわられた方もおられ、とくに田中支配人が就任されてはじめてということでワクワクです。ただ実はSNSで色々とお店のことは聞いてましたので、はじめまして!みたいなことにはならなかったです(笑)
Création税込¥22.000
今回はディナーで訪問しました。いってきま~す!
いい色ですね。
メニューも以前より大型化しています♪
やっぱり、でてきたヘーゼルナッツ♪
全部で12のパート。これは頑張って食べよう♪
①APERITIF 四種のアペリティフ
岩間分析→仏料理 温度→冷温常
(左より)
大根餅(水無月状:6月なので)レンズ豆 (温)
鯖 葱ニラのソース (冷)
有明海のクラゲ (冷)
チーズ風味のシュー生地に鮒ずしを砕いたものを挟む (常温)
料理ごとにジャンルは何かと温度を各料理ごとに分析していきます。モトイさんの料理は何故か毎回分析しますが、たしか中華にどれだけ傾倒しているか計るために最初していました。同じやり方で今回もやってみます。その料理の流れが以前とどう違うのかたのしみです。
ジャンル的には大根餅がでているのでかなり中華に傾倒したフレンチといえます。それぞれのさじに「ご挨拶」の気持ちが味に表われています。こりっこりのクラゲや大根餅のなめらかさ、鯖はおそらくしめてありますね。少し和もイメージしたパートかもしれません。
このオードブルは、おそらくこれからの展開上の料理ジャンルの割合を、端的に紹介しているのかもしれません。いいオープニングスタイル。そういえばエルブジ的な匙サービスは6年前にはなかったようなきもします。
② AMUSE BOUCHE 賀茂茄子の冷たいポタージュ
岩間分析→仏 温度→冷
賀茂茄子のスープ 賀茂茄子の煮浸し
コンソメのジュレ 雲丹
茶碗蒸しに見えましたが違いまして。。。。この料理、材料は 雲丹 賀茂茄子 オリーブオイル 塩だけらしいです。 この幾層にわかれていますが、温度管理の良さといいましょうか、すべてが冷たく仕上げています。まるみあるスープは結構濃度がありもうすこしでペーストになる状態。それをうまくムースのようなふわふわ感でせまってきますね。
③PORC 蔵尾ポークの雲白肉(ウンパイロウ)
岩間分析→中華 温度→温
滋賀県 クラオポーク(バームクーヘン豚)を塊で蒸してスライス
韓国唐辛子のソース+ラー油(自家製:ピリ辛系) ハーブ類
サービスも「中華料理です」、とちょっと微笑みながら。。。たしかにこの名前は中華。そのとおりでこの薄切りの豚肉にかなりの旨味が載っているとわかります。薄くても素材の持ち味がはっきり鮮明にわかるように。
辛い料理がでてきた。。。
おそらく「辛い料理」をモトイで食べたことがないのでは。。。と思い出しながらたべてますが、正直以前にくらべて激しくというぐらい中華の領域に傾倒している料理です。これをフレンチと呼べるかと考えるのですが、中華の論法が真っ当なだけに「完成体」をフランス料理に含ませるのもアリかなあと思いました。
このあたりから、ニューモトイの流れが垣間見れますね。
いい意味で「ワイルド」ですよ。
容赦ないモトイワールドがはじまった感強い。
歩いてきましたが、天然水スパークリングをいただきます。
●オクアイズ カネヤマ 硬度45mg/L 1100円
パンは硬いのと柔らかいのを選べます。
そう、これは開店当初から変わらない大山崎の「サンクパン」さん!今も店と繋がりあるのでうれしいです。味わい深く、ここのパンはするめ系で、噛めば噛むほど風味が感じられにじみでてきます。
ちなみにこれは公式サイト、あの木津川市のリストランテナカモトさんの仲本シェフも通われる(テレビ番組で紹介)お店です。ここのパンを使うレストランはミシュランの星を獲得できるとか聞きます♪

飲めるほどおいしいオリーブオイル登場。

oki olive 澳(おき)
香川県高松市の産物です。オリーブのうまみだけでも飲める。。。濃度も結構ありますね。
パンの薬味は3つありまして、先ほどのオリーブオイルと
鳥取の海藻(もんば)入り発酵バター
揚浜式の奥能登塩田の塩
なかなか、凝った産地ですね。もんばという海藻ははじめて食べたと思います。このバターのおいしいこと。磯の香りがほのかに。。海岸線のイメージが。。あとからオリーブにすこし塩をいれていただかせてもらいましたが、その甲斐あってパンは4つは食べましたね。。すいません(^^;)
④ FOIE GRAS
岩間分析→仏 温度→冷
フォアグラと桑の実のコンフィチュール
胡麻のヌガティーヌ
フォアグラは丸のまま塩麹でマリネ 50度程度の低温調理
桑の実をジャム状に甘くして
胡麻を砂糖と水飴を加えてのばしてチュイル状に
ヨーグルトのソース
サービス曰く、
「酸味、甘味、フォアグラなど様々な風味。食感で楽しんでください」
そのとおり!この料理、肝(フォアグラだけに)はそこにありますね。それぞれベつの素材ですが、挑戦するかのように一つ一つが異なるパーツ。しかし、フォアグラに甘いのもあうし、甘いのは酸味にも門戸をひらくわけで非常におもしろく食べ尽くしました。やや硬い雷おこしのあとにすこし柔らかいフォアグラ、そしてふあふあのソースが導かれますね。小宇宙でございます。
⑤ FROMAGE DE SOJA 麻婆豆腐
岩間分析→中華、和わずか 温度→温 ほのかに温
中華です!ただ使い方が斬新!豆腐のムースに麻婆豆腐ということでほぼ豆腐なのですが、わずかに顔出した麻婆豆腐がきりっと味を納めてます。豆腐の部分はわずかにオリーブオイルだけ入っているそうです。麻婆部分で使用する平井牛をミンチにせずにぶつ切りにするのもおもしろいです。
新感覚の麻婆豆腐。辛さを豆腐で中和するということより、淡い味の豆腐に濃い麻婆の風味を載せる体。こういうアプローチもあるのだなあと思いました。
サンクパンのやわらかいパン。
⑥ HOMARD ブルターニュ産 オマール海老の春巻き
天然クレソンのサラダ
岩間分析→中華 温度→熱
パートフィローをバターでとめて春巻き状に。
オマール海老ときのこ類
セロリラヴのピューレ
大原のクレソン
甲殻類のソース トマト少し使用
熱々でした。いままでのなかで最も温度が高かった料理。春巻きの皮で無くパートフィローを使うところがフレンチとの境界線かもしれませんね。後でお伝えしますが、シェフはこの「中華とフレンチ」の境をぎりぎりまで追求しているようなこと、おっしゃってました。その典型ともいえる料理。プリップリの海老がはち切れんばかりに入っていて、カリフラワーのピューレがうまくマイルドに感じさせてくれてます。
⑦ POISSON 平鱸(すずき)のポワレ
やわらかなリゾットと海藻のスープ
岩間分析→日本 温度→温
平鱸は皮目をパリッと焼き上げた
リゾットとかかれているがお粥寄り
フュメドポワソン(魚のだし汁)にトマトと
海藻類のアッシェ(細かく刻んだもの)を
くわえてとろみをつけたもの。
ナスタチューム
最初は具材だけがあり、あとからフュメドポワソンをそそぐというサービス。魚の皮目はきわめてパリパリ。下の御飯は餅米?と思うぐらいまったり柔らかい。これも海藻からくるのだと思いますが、とっても海を感じる作品です。これは今数日経っても「和食」だと思える一品。
⑧ LAPIN トゥアール産兎のバロティーヌ
岩間分析→仏 温度→温
トゥアールはフランスの都市 そこの兎
兎のミンチ肉にロニヨン(腎臓)フォア(肝臓)を詰めてロティ
ジュドラパンのソース
モリーユのフリカッセ
ヤングコーン「うまい菜」
トリュフがけ(仕上げ) 南オーストラリア産
ものすごいフランス直輸入のようなメニューがきました。モリーユ、私が住んでいたローヌの研修先では多用していましたが、この風味なつかしいなあと思いながら・・・・ヤングコーンはこの穂先?みたいなところ食べられますか?と愚問を。。。これも東京葱のような粘着性と食感がワイルドでたのしめました。
バロティーヌ 円筒形にした肉を詰めたりする料理。たしかガランティーヌとどこがちがうねん・・・・とフランスの職場で叫んだことがあったような。だいたいシェフはガランティーヌが主流ですね。バロティーヌのほうがレアでオーセンティックな印象が強いです。
しかしまさかモトイでこの料理がでるとは。とくに兎をメインにもってくるのは馴染みのない日本人にはすこしびっくりするのでしょうね。なんとなく味は鶏とにてますが、私的には魚類にも似ている部分があると記憶にあります。ただ、この兎料理絶品で、一度食べるとくせになります。
なんとなく、フランスに住んでいた人をターゲットに製作したのかと思うぐらい「オタク」な料理だと思いました。兎とモリーユ、やっぱり相性よいですね。
夜はすこしつづ迫ってきます。この日はほぼ満席なものの感染対策防止もあり、他のテーブルと距離をしっかりとっておられましたね。
料理、非常に凝ってましたね。前回訪問は6年前ですが、アクセントがさらに際立った感じがしたし、熟れた料理が存在していました。そしてこれからデセール探検ですね。
夜も深まってまいりました。サービスの解説を聞き、ソムリエの田中さんとの「うまい菜」の話など、楽しませてもらいました。
6つのティ 3つのハーブ系 2つの珈琲
で、このなかの煎茶をみていたら、田中支配人がわずかに「甜茶」がありますよ。と天使のささやき。メニュー替えで在庫があったのかもしれません。ちなみに主に柳桜園のお茶を使用されていますが、料理や御菓子には辻利さんのを使用されるようです。
真緑のマットが登場。
⑨ DESSERT 1 蜂蜜のグラスにバルサミコと
熟成みりんを合わせて
岩間分析→仏 温度→冷
ホワイトバルサミコのジュレと
「みりんこ」という味醂(液体:佐賀県唐津)
蜂蜜のアイスクリームはおいしいはず。それに輪をかけての芳醇な味醂とほのかな酸味が饗宴。これはまあ、1Lぐらいはほしい「奴」です。
⑩ DESSERT 2 抹茶のシブースト
岩間分析→日 温度→冷と常
抹茶のシブースト
グレープフルーツ
甘酒のアイスクリーム
2品目もアイスクリームですが、これは結構大人の味。日本の風味が活かされていますね。抹茶、甘酒。ここで日本のもどってきたのだなと感じます。シブーストは口の中でほろりと溶けていきました。
⑪ DESSERT 3 分解したメロンのタルトと新生姜
岩間分析→仏 温度→冷
メロン
メロンタルト
メロンのアイスクリーム
メロンのフレッシュ
新生姜のグラニテを後がけ(サービスから)
これはなかなかおもしろかったです。ひとつの素材を「分解」、まさにそのとおりでした。メロンの風味は天下一品というぐらい好まれますがそれを、別の手法で提供するという素朴さが興味深いです。
3段構え、多少ほろ酔い気味の大人の味ですね。以前より洋酒、お酒の使用はふえたように思います。それと和のテイストが特にデセールの領域から増えてきました。箱はフレンチですが、中身は中華と日本という構図はちょっと今までの印象とは異なり、京都に憧れる客人にも受け入れられる要素が増えたようにおもいます。さらに世界の客人を想定した方向性もあるでしょうね。
⑫ MIGNARDIES ミニャルディーズ
岩間分析→仏 温度→冷
マカロン 紅茶葉 大徳寺納豆
ココナッツ風味のお団子
珈琲風味のシュークリーム
柑橘の球体
カヌレ
州浜(すはまや:烏丸通り)
生キャラメル 自家製 2つ ラベンダー風味
以前の印象とはがらりとかわりましたね♪一つ一つが大きい(^^) あくまでフレンチの領域ですが、州浜や大徳寺納豆など京都を感じる構成に仕上がっています。
サービスの説明しにくそうにしていた「植物由来」のゼラチン的な被いに柑橘がたっぷり入っているという逸品。
柳桜園の甜茶 で 〆(しめ)
ちなみに♪
モトイのパティシェはフレンチファンだけでなく世界的にも有名な、オーベルジュドミラドーの勝又登シェフの元で料理人として4年間修業されたらしく、モトイへ来たときにパティシェ部門にコンバートされた異色の存在です。料理をしっているパティシエだとアッサンブラージュカキモトのシェフがそうでしたね。ですので料理の流れもわかるということでグランメゾンには必須なパティシェですよ。
パティシエさん、ご馳走さまでした♪
料理の流れも非常によくデセールのイメージもぴったりでしたよ。
たっぷり堪能♪
まずは分析結果を。。。。
1 仏 温冷常
2 仏 冷
3 中 温
4 仏 冷
5 中 温
6 中 温熱
7 日 温
8 仏 温
9 日 冷
10 日 冷
11 仏 冷
12 仏 冷常
仏:中:日=6:3:3=合計12パート
温:冷=6:6
この比率いい感じですね。どれも3で割り切れるというのがたまたまなのか、計算なのか。興味深いのは以前は「それとなく」「ほのかに」中華が、春巻き風もあればお茶漬け的なものもあって、どちらかというと「しっかり」という表現が妥当な感じになっています。
いままでのモトイは、けっこうポーションが比較的小さめで上品にそっとという料理もありましたが、バロティーヌや、海藻のスープもわりとたっぷり目。これが男性には特にありがたいかなあと思いました。さらにラー油や春巻き(パートフィローですが)は王道中華のイメージ。麻婆豆腐も量こそ豆腐のムースのほうが多いですがれっきとした中華がどん!と置かれた印象があります。
※一瞬マスクとっていただいてます。
シェフに調理を終わられた後、直撃!!とおもったら後ろからさっとお越し頂き。。。そういえばサーフィンされててこんがり小麦色♪
「以前より「フランス」と「中華」の領域のギリギリのラインでお出ししている」とのこと。つまり、かつての貴重な経験の中華の部分がより前にでている感じがしたのはシェフもその良さを引き出すことに、スキルを増したということだと思いました。
実はそれには経歴に気になるところがあったのです。たしか以前聞いた話として当初はリーガロイヤルホテルに就職したものの、ホテルの人事で中華担当になられてしばらく中華の道を歩まれたのですが、その後「ホテル日航東京」という経歴を私は知らなかったのです。。。。実はその系列の「ホテル日航大阪」はいまもそうですが強者揃い、もう予約ができない「仁修楼」や、元田中の「イーパンツアイ田中」、ミシュラン掲載の「ベルロオジエ」、馬町の「すみよし」も実はその大阪のホテルの出身でした。
前田シェフは東京でしたが、提携もありおそらく同日航ホテルグループは連動していたわけでかなり修業場として鍛錬できたのではないかと思いました。つまり前田シェフはやはり大阪の「HAJIME」の経歴が注目されますが、当然そこもすごいのですが、中華の経歴も申し分ないところで修業されていたということでしょうね。そして、私が在籍していたホテルオークラ京都も当然、彼の経歴にプラスになったかと思います。ご本人はこれまで歩んだ調理場にレスペクトされているからこそ、今があるのでしょうね。
満を持して、フレンチと中華の高らかなる共鳴が、覚醒したのか。。。。
総じてそういう思いを抱きながら京都市役所前をあるきながら帰路に考えていました。そういえばコロナ禍でOPENした「モトイギョウザ」が好評、テイクアウトの「ブイヤベース」も出荷待ちの時期もあるとも聞いています。そういう中華やフレンチの活動も顕著に成功してきたので、モトイというお店はフレンチだけじゃないというところをさらにいま打ち出そうということかもしれませんね。是非ともこれまでいかれたモトイの料理の画像と現在の料理を見比べてもらえたら幸いです。
全体的な流れをいまご紹介しましたが、個々の料理はとても印象に残っています。とくに麻婆豆腐はこういう使い方もあるのだなあと。淡泊な豆腐にパンチの効いたうまみたっぷりの麻婆をあわせる妙技。
反面、平鱸のポワレの皮目焼きは、まさに関西風うなぎの白焼きのごとく皮目が香ばしいし、あのお茶漬けリゾットは心にしみわたる和風のモトイを感じ得ました。「際立っている」という料理の列挙は客人を飽きさせませんね。
サービスについてはこれまでどおりの質を保っていますし、しつらえもしっかり整理されています。中央の生け花もはなやかでいいですね。サービスはすこし若返りをしたのか初々しい感じもします。
そのなかで大きく変わったのは「支配人」のポジション。ソムリエでもある田中支配人が就任。お伝えしたとおり以前から情報交換をしていましたので、彼の情報量や人脈が長けているというのも知っています。そのなかでレストランのフロアの長としての存在感は申し分なく、統制力とともにサービスをしっかりプロデュースされています。
つかず離れず。
そっと部下に助言したり、補足をされたりと、よく流れをみておられます。ときには気さくな話もされますし「人なつっこい」サービスも垣間見れます。前田シェフの「モトイの料理」をしっかり客人に伝導できる人だと思っています。
樹は熟した。ということ。
モトイは長らく、ミシュラン1つ星を頂かれていましたが、そろそろ2つめの輝きがふさわしい存在になってきたと確信しております。あえてこの時期に立ち寄ったのもそれがあるから。レセプション、コミ、シェフドラン、メートルドテル、ギャルドマンジェ、キュイジニエ、パティシエ、そしてグランシェフ、がしっかり設定されていて機能しています。
京都初のフレンチ2つ星、を望んで。
Je crois en Motoi
Une autre étoile!
Bonne chance Motoï!!
↓前回の訪問は2016年です。あれから料理はさらなる進化を遂げています。
ちなみにこれは初訪問 2012年です。
思えば長らく存在を見続けてます。