京都のお寺や神社には趣深い庭園があります。それは歴史を語ったりその存在を示す方向性をしめしている場合もあります。そういったお庭とは別に個人が所有されているところを観覧できる場所が、京都には存在します。今回「白龍園」を伺ったきっかけは、京都グルメタクシーを定期的にご指名くださるお客様のご依頼があって、私も初めて伺うことになりました。当然当初はまったく情報がなく、常時観覧できるわけでないこともあり、期間限定でしかも毎日先着100名限定で公開されているのもあるのでしょう。人数を限定するのには理由も実はあり、今回目で見てその理由も感じとることができました。長年手塩にかけてつくられた人々の見事な庭園をまずはご覧いただきます。
◎入り口のスペースです。落ち着いた風情があります。
この庭園は故青野正一氏(
青野株式会社の創業者)によって今から約50年前に開山されました。開山にあたり八大龍王と白髭大神をまつる祠と大鳥居がたてられ、霊城を守る神社を形成したことから、二文字をとって「白龍園」と名付けられたそうです。この場所は本来太古より山の神々が住むと言われる鞍馬の手前、二ノ瀬の里、安養寺山麓にあります。そして春には山ごと桜色に、新緑、そして見事な紅葉も秋には楽しめます。
そして、もっとも驚くべきはすべての造形、そして建物、庭園が青野さんご家族、会社の社員さんで50年余りの年月をかけて造営されたそうです。つまり庭師や建築業者の力を借りずに管理をされているわけです。その流れが大きな力となって緑や建築物に表れています。そのあたりも是非ご覧頂ければと思います。この日は実際その庭園管理を、継承されている園長でおられる市川様にお話しを伺いながら鑑賞させてもらいました。
◎寛永寺ゆかりの大灯篭
大きさ、形の見事な大灯篭。徳川家光公ゆかりの寛永寺にあった津軽土佐守藤原信義が寄進した灯篭だそうです。それを二代目が譲り受けたそうです。どっしりとした風格ある姿は来るものに会釈をしているようにみえますね。
◎清風亭への道
園内には5つの東屋があります。そのうちの一番低い標高にある清風亭への経路。どの建物も魅力的でオーナーと社員さんで建てられたそうです。
◎清流亭
その名前の通り清らかな流れの中にある東屋。もっとも凛としている風景。まるで緑の中に溶け込んでいる感じがいたします。飛び石の配置も素人の私でも流れの良さを感じますね。雅な日本画をそのまま生きた風景として取り込んだ見事さを堪能できます。
◎龍吟亭
清流亭から一段あがったところ、ちょうど祠への経路に存在します。こちらは山に向かって建っているので身近に植物を感じることができます。この画像ではわかりにくいですが後方には清水寺と同じ懸崖造りになっていて緊張感のある構造になっています。柱と土壁も侘びしく一体感がありますね。この日は4月の理想的な天候でしたがこのあたりからひんやりと感じました。
社に行く途中に小川を超える小橋があります。実はこれも会社の方が作られたものだったのですが、非常に頑丈でまったく揺らぐことがありません。きしみもせず。。。見事な橋です。社員の実力でもある一体感を象徴するような作品ですね。
ちょうどこの左側が社がありますが、ここは撮影禁止ですので画像はありません。神聖なる空気がこのあたりを覆っていますね。それとこの道に広がった苔が見事で厚みはそれほどなく、それでいて丈夫に生えています。苔と道の間に囲いがないのです。
つまりこの苔を踏んでも大丈夫だそうですが、実はこの苔を守るために100人という限定の観覧者の制限をされているということです。
苔が痛む→囲いをする。
この流れを望まれないから制限をする。
囲いをすれば「不自然」ということ。
その青野さんの気持ちが
この苔に表れていると私は感じました。
福寿亭にいく道です。一変して明るさを感じて谷あいの向かいの山々が美しく見えます。ここにもうっすら苔が生えています。導かれるように傾斜がついていて知らぬ間に東屋に到着します。自然の流れのままに体が動く、そして風景が連動して動いて見える。この谷との間に貴船につづく自動車道路がありますが、それを感じさせないつながりがあります。
◎福寿亭
もっとも見晴らしのいい東屋です。生垣も刈込をきつくされずできるだけ自然体にされるので、表情が柔らかく決してガードや囲いの為のものではないことがわかります。さらに借景を目立たせるような構成で活き活きと。
窓に見える風景を最大限生かす額縁。蓮華寺、高山寺、詩仙堂の額縁の美意識もこの建物にも宿ってる感じがします。
山紫水明処 ここにあり。
土壁に土に巣をつくる蜂がいます。でも駆除することもされずそのままに。この巣の模様も一つの風景と思われているようで、生物との共存もこの庭園のテーマだとおっしゃってました。ほっこりするお話ですよね。元来人間が自然界に後から来たのだからこういった考え方は忘れがちです。そんなこともこの巣の穴で感じ取ることも可能だと思いました。
自然と共有 自然と共存 自然と共生
◎鶯亭
福寿亭の一段下がった一番広い平野部にあります。建物も大きく複数の人が楽しめる空間といいましょうか。すこし感じたのですが5軒ある建物の窓の下の部分が様々なバリエーションがあります。板になっていたり竹になっていたり。そのあたりの遊びもわくわくさせる一つですね。皆さんも実際ご覧ください。
◎彩雲亭
この建物はほぼ壁がなくまさに風景をもっともわかりやすく見せる構造になっています。柱の構造もわかりやすくみえます。色々な東屋を見てきましたが、庭の重要な場所にしっかり存在すると思いました。人をもてなす空間として十分だし時間を忘れさせる絶景と自然との交流。楽しむことができました。
入ったときに右側に竹垣があります。これを上から見ると中を見てみたいと思ってしまいまたね。実は凄いものがここにあります。
◎露店風呂
実は以前テレビでここをロケされていたことを思い出しました。個人宅の領域に入ったことを実感する瞬間ですが、ロマンがありますよね。会社の研修所としても利用されているので納得の設備です。会社の方もここにきて庭の手入れもされるのでいろんなことや自然のことを学べる場所でもあるのでしょうね。
山椒の木があります。貴船はそれこそ山椒の佃煮はポピュラーですからリンクしています。
◎河鹿荘
この観覧の期間だけ休憩処を向かいの河鹿荘でされています。おぜんざい、甘酒、抹茶とお菓子を楽しめます。天然の自然光とゆるやかな照明が心地よいです。
自然のなかで囲炉裏を囲んで自然あふれる庭園で楽しまれた後はこちらでほっこりいかがでしょうか?京都グルメタクシーも推薦する美味しい甘味どころでもあります。白龍園と連動して開かれておられます。
すべてを終えてお客様と車中ではこの庭園の話でもちきり。とっても印象に残る場所だと私もお客様も。やはり会社の社員が主体となって庭を管理される。なかなかできないことです。庭をつくるにあたり有名庭師を起用するのではなく創業者、関係者自らが手がける、そして二代目、三代目、そして会社の社員がその歴史を継承されて造園に正面から取り組まれる。そのひた向きな努力が実り今日の庭園の美しさに表れているように思います。一日100人限定ですが、その制限されて継承されている意味が伺うことによっておわかりいただけると思います。一度そのすばらしさを堪能いただければと思います。
◎観覧方法
下記の期間内でまずは叡電出町柳駅に行かれて改札横の窓口で買います。券は2種類あって1300円が観覧のみです。2000円はなんと一日フリー券ですので二ノ瀬だけでなく時間のゆるす限り鞍馬などにもいけます。(駐車場がなく、しかも100Pもないので私も電車でお客様と伺いました)そして、白龍園では入場券を販売されていませんので必ず出町柳でお求めください。あとは天候と休園日がありますのでご注意くださいね。
4月2日(水)~5月25日(日)休園日あり
料金 白龍園特別観覧きっぷ 2,000円 白龍園特別観覧券 1,300円
時間 10:00~15:30(受付15:00迄)
休園日:4月5日、18日、25日、30日、5月12日、20日および雨天の場合
駐車場は一般車、ハイヤー、タクシーにおいてもないそうです。
叡山電車 営業課 075-702-8111(土・日・祝日を除く9時~17時)
「二ノ瀬」駅下車、徒歩約7分
叡山電鉄公式サイト
http://eizandensha.co.jp/around-event/#post_3389
フェイスブック公式ページ
https://www.facebook.com/Hakuryuen
最後にこの庭園の持ち主でおられる青野株式会社様をご紹介いたします。
http://www.aono-kids.com/
全国百貨店展開されている子供服のお店をされています。ご参考に(*^_^*)
◎通販サイト
http://www.aono-kids.jp/
最後までご覧頂きありがとうございました。また庭園の勉強の為問い合わせにお答えいただいた青野株式会社の方々、ならびに庭園でご説明頂いた市川園長様、ありがとうございました。同行させて頂いたお客様により素敵な京都の風景を見つけられたことにも感謝申し上げます。一つのご縁がすばらしい人や風景に出会えることに重ねて感動し感無量でございます。ブログファンの皆様も是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。ブログでご紹介する以上に実際足を踏み入れられたら、さらにこの庭の魅力で幸せな気分になられることと思います。またご感想お聞かせくださいね。