2017年9月19日オープン
このお店の名前を聞いて思い出されるのは、1982年創業の画廊フレンチとも呼ばれた「ひらまつ亭」。私が1992年フランス修行しているとき、仲間と度々平松シェフの名前が会話にでてきました。当時の憧れのシェフであり、そのお店に入るにはどうすればいいかと悩んでいる人もいるぐらい狭き門でした。その伝説的なシェフは2002年オーナーシェフとして初めて、ミシュランの星をパリで獲得されました。わずかOPENして4か月。。。その偉業は世界に知れ渡り時のシェフとして絶賛されました。。。。
その屋号を受け継いだ「レストランひらまつ 高台寺 」がいま目の前に存在しています。元フレンチ料理人としてもやはり、このネームは特別な思いがありますね。それと同時に京都という場所でどのような展開をするのか、興味深く思っていると「よーいどん!」のグルメレポーターとして、自著にも掲載協力いただいた「嵐まる」オーナーの佐藤さんの
「京都ランチ倶楽部」のランチ会に参加する機会を頂きました。正直半信半疑。ひらまつの名をどう京都で広めていかれるか、特別な時間が今始まります♪
入り口、というより道にでて2人のサービスがすでに来客の動向をみていました。この日はご覧の通りの台風の影響あって、横殴り。主宰の車に載せてもらったので玄関に降りると乗車店員と同じ傘がお出迎え。婚礼、宴会にも慣れている感じがしました。
ちなみに、このとき11人がそれぞれ到着しましたが、神対応と思える瞬間がありました。3つ目として、後程ご紹介いたします。
玄関奥には日本料理店、こちらは玄関入ってすぐの左に入口があります。モダンな造りで非常にシンプル。エントランスからこの奥のエレベーターを使って3階に行きます。
廊下は真紅。鮮明な映える場所。これからの宴を期待させる効果があります。
本日は11人の個室使用。かなり贅沢な空間でブライダルにも向きますね。そしてこの奥の大窓がすごいです。八坂の塔が理想的な距離で中央に見えます。イルギオットーネも見えますが、またそことも違う魅力の風景です。
素敵な風景♪窓の右の方には建設中の「パークハイアット」が見えます。高台寺のすぐ横です。
大広間の玄関。上品。ホテル並みの質実剛健さ。
とにかく京都の個人店では、ずば抜けて空間に余裕があります。
この日はランチで料理のみとして、税サ込で 8300円程度の支払いでした。
非常にわかりやすいメニューですが、実はしかけがあることを後で知ります。
飲み物のメニュー。
基本的にお皿は、純白とも言える美しいホワイトで統一されています。説明はベテランサービスが一通りのコースの説明を、暗記で披露。滑舌よく、さすが東京からの流れのお店だと思いました。ちなみにサービスは大阪の人がお1人。あとはすべて東京ということで、なんと京都の人はいません。そのあたりの構成も興味深いところです。確かにまとまりのある落ち着いた、安定感あるサービスでした。
あとは、観光客が来た時に、午後の予定など質問攻めになることがあると思います。それをどう対処するかがこれからのサービスの情報としての進化も期待したいです。
キャラメリゼされたピスタチオ
最初のおつまみ的な一皿。2人分としてスプーンを添えて提供されます。
OURSIN YURINE
雲丹 百合根
北海道産の百合根のピューレに鰻の佃煮が隠されていました。鶏のコンソメ・シェリー風味のジュレ 最後にフレッシュ雲丹が載っています。シェリーの風味を残しつつ上品なジュレと滑らかな百合根のピューレ。サービスにジャガイモも入っている?と聞いてしまったぐらい豊かな味がしました。
エシレバター ドユーブル 2人分 30g
これはびっくりです。この量はちょっと京都ではありません。。。さすが。
パンは見た目硬そうですが、実は皮目も噛みやすく、なかはしっとり潤いもあるもっとも理想的なパンです。これだと、どれにも合いますね。
CALAMAR PETITLEGUMES TOMATE
親烏賊 プティレギューム トマト
烏賊を胴の部分だけをシンプルに焼き上げたのみ。下には4種類のブロバンス野菜を賽の目切りしたものを敷き、湯むきした10分程度オーブンしたフルーツトマトで上にはニンニクをローストしたもの。
素材によってシンプルにすべき調理とじっくり作る調理のメリハリがあります。トマトは生よりもさらにローストすることによって、甘さが増します。フレッシュハーブのタイムの香りも南仏のイメージを強調しています。
料理はシンプルなほど、勇気が必要。それを証明するかのような料理でした♪
GUJI AUBERGINE CHAMPAGNE
ぐじ 千両ナス ソースシャンパーニュ
炭火焼のぐじ(甘鯛) 千両なすのピューレ バターソース
絶妙の火通り。ぐじという表現がかなり京都に近寄ってもらっています。ほとんど京都以外では通用しない名前なので、表記を京都ではないゲストにはどうするのか聞いてみてもよかったですね。理想的な柔らかさとぐじ特有の淡白な風味、味がしっかり表現されています。
料理としてジャンルは、間違ってもヌーベルではないです。サービスにも聞くと「クラシカル」、古き良きフランス料理の本質を盛り込んでいると感じるのが、この料理におけるソースの役割。バターソース、京都ではなかなかお見かけしない味なのですが、教科書のソース部門で最初に登場するぐらいの定番なのですが、これを今使うと逆に新鮮なのです。オリーブオイル・煮汁を多用する傾向にあるヌーベルとは違う魅力がありますね。そういった「いい意味」でのリスクを逆手にとるのもひらまつの特徴ある調理なのかもしれません。
これまでにないコースの設定が次のメインにあります。
強調しますが、肉料理が2回出てきますが。。。。最初は鳩。
PIGEONNEAU POMME
フランス・ランド産仔鳩 林檎
仔鳩は直火胸肉と、ささみ、鳩を焼いたうま味で作ったソース
シナモン風味の紅玉
鳩の特有の風味ある非常にやわらかな胸肉、鶏肉の胸肉とは別物というぐらい濃厚なうまみを含んでいました。そして相性のいい林檎系で付け合せ、そしてソースも盛り上げ役として優秀な合わせ技を演出してくれます。シナモンの量も適量。鳩+果物系ソースの伝統的な構成です。
メインの2品目も。。。。鳩。。。
CUISSE DE PIGEONNEAU DAUPHINOIS
仔鳩もも肉 ドフィノワ
もも肉をガチョウの油でコンフィ(油の中で低温で火を通す)じゃがいもをスライスしてホワイトソースをかけて古典料理のドフィノワとして仕上げたもの。
1つ目の特筆すべき出来事
2つの料理に同じ食材をメインとして提供するとは。。。
これ基本、あまりやらない手法です。一つ目の出来事としてご紹介するのですが、同じ食材だと「飽き」といいましょうかマンネリになりますよね。「また鳩?」って当初は思いました。ところがです。。。
一つ目はガンガンに鳩味を強調したもの。そして二つ目にはコンフィをすることによってカリカリ感やもも肉の弾力、そして付け合せを大幅に変えることによって、刷新されるような美味しさにかわります。同じ食材がメインなのに部位と技法を変えただけでここまで違う料理に「化ける」という妙技を証明しています♪
それと「遊びの部分」としてどちらも黄色い「林檎」と「じゃがいも」を同じ感じで並べるという面白さ。2皿目に「また林檎?」をさせておいて実は同じ外見の芋系をもっていくのが興味深いです。ただこれをシェフが意図的にやっているかどうかわかりませんが、私は「吉」を導く演出だと思います。
2つ目の特筆すべき出来事。
ジビエをメインに持っていくとどうなるか。。。。
おそらく対応できないお客様もでてくることは確かです。それぐらいくせのある食材もあるわけで、雉などはかなり風味が異色でしょうね。鳩も例外ではありません。あの独特の風味はある意味人を選びます。サービスは苦手な方に別のお肉を用意できますとおっしゃいました。それとコースが始まる前にあらかじめそのこともコース全体で好き嫌いなどを聞かれていたことも付け加えます。
お1人がジビエを別のお肉に変更されました。そして鳩料理がでてきましたが、今回の料理は、とくにむね肉は風味が強く、おいしいのですが、別のもうお1人、食べている途中で厳しいと。。。挑戦はしたものの食べ切れない・・そういうことありますよね。通常なら頼まれたのだからお皿を下げられてそのメインはパスということもあるかと思います。ところが、サービスはそのあと差し替えて、蕪も載せてメインを補填してくれました。その対応に歓声がわいたのも確かです。お店側には落ち度はありませんが、前向きなお詫び的対応ですよね。「味があわない=満足できない」、それをサービス側が挽回する流れを作った瞬間でした。
料理に話もどします(笑)
フロマージュはワゴンサービスです。1カット追加で600円~です。
POIRE CHIBOUST
洋梨 シブースト
洋梨の軽いコンポート 表面をブリュレ状にやいたムースケーキのシブースト アニス(八角)の香りを付けたキャラメルのアイスクリーム
広いお皿に置いているだけに量的なものは見た目感じませんが、結構あります。甘さはパリの基準という感じで、緩急がすごかったです。とくにアニス風味のキャラメルアイスはかなり挑戦的な味でした♪
INFUION
ハーブティー
奈良で栽培しているミント、契約農家のフレッシュレモングラス等で構成されているそうです。ほかの飲み物を対応してくるかどうかは聞いていません。でも個性としてここの終わり方もありだと思います。
料理については伝統的フランス料理には違いないのですが、重くなくバターソースも量的なものや、濃度をしっかりコントロールしていますね。火入れ、タイミングも絶妙。そしてなんといってもさりげない演出が私には感じられました。
メニュー名は至ってシンプル、でも調理技術は細かい部分で苦労されている証が垣間見れます。料理長とは、最後にご挨拶させていただいた程度ですが、名前を検索するとかなりの経験がおありのようです。京都の食材というより世界の食材に目をむけていて、淡々とひらまつの料理が現れるという感覚です。京野菜に頼らず、独自の路線でしっかり伝統的な論法で作品を仕上げる。そういう流れを全体的に感じました。
サービスについても非常に安定感があり、聞かれたメニューの内容は100%の回答力があり、非常に店の料理に敬意をもっていることが言葉の節々からわかります。あの最初のすべてのメニューを暗記で熱弁するすごさ。つまりもなく話し続けられるのは厳しい環境の東京で培われた経験と努力の賜物だと思います。構成されているのが正社員で若い人もスキルは高い。東京資本の優雅さをサービスから感じ取ることができます。
3つ目の特筆すべき出来事。
サービス精神の極み。。。。
お店に集合する時間に話を戻します。10月29日12時。天気は台風の影響を受けて大雨、横殴りの様相。続々と11人のメンバーは集まりましたが、その中のお1人がレストランには駐車場がないと思われていて、離れた高額のパーキングに停めて玄関にこられました。するとお店に駐車場があることを知らされたわけで、一旦とりに行こうと考えられましたが、12時の集合時間にも迫っていたこと、そして悪天候で大雨。。。。やはり迷われたそうですが、あきらめて玄関へ。。。そのあと瞬時にサービスはキーを借りて車を有料パーキングからお店の駐車場へお送りするとの提案をされました。
通常、お客様の車も千差万別で、もってくる間にリスクもあると思います。でも雨の状況や時間が迫ったことを踏まえてとっさの対応をされて、車をサービス人だけで専用の駐車場に移動。通常ならお客様に求める作業だと思います。このサービスは決して、いつでもされるということではないとは思いますが、「親切心」が生じたというぐらい自然に行動された感じだったと車の持ち主はおっしゃってました。
神対応。。
そういっても過言ではないです。こちら側が求めたわけではないですが、やはり料金がかさむ状況はどんな人でもいいものではありませんね。そのあたりの善意はこのお店の将来を明るくするように思えました。ひらまつグループは今現在600人以上の従業員をかかえています。それでも東京から奈良や大阪にも支店ができていくのは単なる大きな会社ということではないと思いました。先端まで創業者である平松宏之シェフの信念が行き届いている結果なのではないかと思いました。
卓越した料理、洗練された空間、特筆すべきサービス。
三位一体の流れがここにあります。
京都の中の東京フレンチ。行くべきお店だと思います♪