★★★ ラ ファミーユ モリナガ
京都市中京区蛸薬師通新町西入不動町175-5
TEL 075-223-3120
ランチ 11:30 ─13:30(L.O.)
ディナー 18:00 ─20:00(L.O.)
定休日 日曜日 月曜日
http://famille-morinaga.jp/jpn/
シェフのおまかせコース ¥4,725(税込)
シェフのおまかせコース ¥8,925(税込)
◎コース+10%サービス料有
料理人にとってセンスと経験が最も重要なものであると私は考えています。このお店にたどりついて、そして料理を食べ終わった瞬間。ここちよく時が流れていったことを嬉しく思いました。
すごく文章が長くなりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
★★★ シェフのおまかせコース ¥4,725(税込)
★★☆ 筍のフリカッセと白魚
ほんのりバターを効かせた最初の逸品。白魚の塩気と筍の風味がまろやかに合わさり、優しく火通りされています。色合いもよく「熱い」というより「ほんのり熱い」という温度で食べたいという望みがそのまま理想的に表現。
★★★★ 毛蟹と帆立貝のモワルー ドーム見立て トマトジュレと
久々に四つ星です!!まずドームの部分ですがこのムースが非常にバランス良く二つの食材が混ざっています。柔らかくそして旨味がしっかり伝わってきます。そしてトマトジュレはこしたトマトの上澄み部分だけをゼリーにしたものです。上品な酸味ともろさ限界のゼラチンの投入。まさしくこの料理の為だけに作られた名脇役。これもまた素材の美味しさがダイレクトに伝わってきます。
★★★★ ポロ葱 甘海老 ムール貝のスープ
これも四つ星!ジュと言いますか。。。コンソメでもないベースのスープにそれぞれの具材が溶け込んでます。ブイヤベースとは違う狙いがあり、塩加減で最終的に調整しているだけなのかも。それぐらい作り方がわかりにくい秀作です。具材が育った海を思い出す爽やかな後味。薬味的なポロねぎは決して主張せず丸みをカバーするような役柄に徹しています。それにしてもため息をつく流れの料理に違いないです♪
◎今回登場のパンについて
★★ バゲットとフォカッチャ
フランス料理店ですが、フォカッチャは自家製。バゲットはどこで作られたかは聞いていません。両方ベーシックなもので料理を邪魔することはないです。熱々というよりほんのり熱い。フランスでは常温が当たり前なのでここのコンセプトを考えると納得かな。給仕は早く、満席でも流れはよかったです。私はパンはかなり食べてしまうのですぐなくなりますが、一とおり食べてお皿があいた時間が多少ありました。でもそのあと長井支配人と目があっただけで持ってきてくれました。「パンをください」は必要ないですね。途中で満席になり給仕は難しくなってきていましたが、無難にこなされています。また後程長井支配人のことは書かせて頂きます。さてまた料理に戻ります。
★★☆ 糸よりのグリエと春キャベツ 温かいヴィネグレットソース
キャドリエ(焼き目)がしっかりついていて塩気絶妙です。それと火加減ですが中まで火が到達した直後に提供されたものと見ました。とにかく正確な技術です。見割れもなくさりげなく空中に浮いているようにも見えます。ういきょうのピューレにレモン風味のソースが素敵。魚の味にさらに複雑な風味を加えてくれます。混ぜれば混ぜるほと一体化。この魚は熱く提供されています。
★★★ ビゴール豚のロティー アンコールペッパー風味ソース
ご覧のとおりビゴール豚は脂身7割ですね。でもこの脂身が非常に旨味があります。赤みがかったところよりもさらに美味しい。火加減もこれもすばらしく潤いを残しそれでいてしっかり熱く熱く提供されています。塩も見えるぐらいだから最後にも調味しているでしょうね。スナップエンドウは主に色合いだと思いますが、歯ごたえを完璧に残しています。ソースの使われる胡椒は生状態。食べてもそれほどきつく香りません。ソースはシェイノの井上さんの哲学を継承するようなとろみと旨味。これが混在して完璧な透明性のあるソースです。
◎「定温調理」とは <<「低温」と「定温」は違う
さてここで某ブログで「定温調理」をされていると書かれていたので、私もすこし気になっていました。「低温調理」ではないのかと。。。。今回伺ったので、支配人にお聞きすることにしました。私としては「真空調理」「低温調理」はフランスでもよく使うことばで、特に真空調理は当時の流行りでもありましたのでなじみはありましたが、この「定温調理」ははじめてお聞きする調理法です。
「定温調理」とは、「コンフィ」を代表とする調理方法。
〇コンフィ(油脂に素材を浸し、揚げ物にするよりも低い温度でゆっくりと加熱して調理する)するときに60度程度で定まった温度で火を通す。
とお聞きしました。つまりフランスの料理用語としてはコンフィに値するということらしいです。「定温調理」は実は検索しても「低温調理では?」とグーグルに問いかけられるぐらいウィキペディアでも掲載されていません。ただ支配人か強調しているのは「定まった温度で火を通し続ける」ということを、もっとも言いたいと思っておられるということです。それと「低温調理」=「コンフィ」ではないことも言えると思われます。
ネット上の検索にはありませんが、新たに森永シェフオリジナルな調理法と考えたいと思いますし、まだ上記の説明では不十分なことろがあるかもしれません。是非お店に立ち寄ってお二人に聞いてみてくださいね。もちろんまた上記の文章が適当でないときはご連絡ください。
さて、また料理にもどります。
★★★★ 清見オレンジのサラダとヴァローナショコラのソルベ
非常に糖度の高いフレッシュなオレンジ、そしてこれが チョコレートのシャーベット です。アイスクリームはいまや当たり前ですが、ソルベは初めて。乳製ではないということがこれだけショコラの風味を強調できるのかと関心した作品です。「小さい、でも小粒でもぴりりと甘い」と表現してもいいかな(笑)それぐらいオリジナルだし素敵なオレンジとの組み合わせ。ヴァローナはフランス研修時代(タインエルミタイージュ在)の私にとって聖地にあった工場。そのこともあって多少暗示にかけられたのかも。でもやはり4つ星デザートなのです。これはアバンデセールではおさまらない実力(笑)
★★★☆ ココナッツとバナナの温かいサワークリームタルト ショコラのテリーヌ
津波のように素敵なデザートが続く。最近冷たいデザートが続きすぎるお店が多いものの、ここのメインデザートはちょっと違う。まずタルトは熱いまではいかないが、常温より暖かく、焼きたてのような風味を感じる。作り置きの湿った部分が全くない。それにこの様々な具材はすべて相性のいい仲間同士。それを上手く焼き上げてる感じ。一人料理人だからパティシエがいるわけではないが、もう一人いてもおかしくないぐらい。。それとこのショコラのテリーヌ。。。長井さんがほほ笑んで紹介されていたので「テリーヌ」というのが本当がどうかわからないが(笑)この潤いのある塊。そして舌に登る感覚はまるで上品なフォアグラのテリーヌのようです。
★★★ コーヒーとグリオットのフィナンシェ
今流行ってる形状のお皿に3つの・・・・と思ったら同席の方々はぺろりと食べてしまって、一つだけ(笑)色合いがよく食欲をそそります。これぞフィナンシェとよぶべき作品です。ミニャルディーズが多い傾向にあるフランス料理ですが、一点勝負というのも新鮮ですね。コーヒーは大盛りで風味豊か。
◎料理に関して
料理の総評の前に森永シェフの経歴をご紹介。
東京「シェ・イノ」で6年間修行、93年渡仏。 パリ三ツ星「ギー・サヴォワ」、ボルドー「グラヴァリエール」、 ロアンヌ三ツ星「トロワグロ」、スイス三ツ星「ジラルデ」にて経験を積む。 ’97年帰国。京都でシェフ歴任、03「ミクニナゴヤ」総料理長、’07神戸・北野に「グランメゾン グラシアニ」 そして 京都へ。
ポイントはやはり「シェイノ」と「トロワグロ」と私は考えます。井上シェフが最も影響を受けた研修先が「トロワグロ」、私はこの2軒とも伺ったことがあるし、シェイノは同級生も務めて支配人になった流れもあり、関西在住ながらレベルの高さを知っています。その子弟同士が同じ研修先というのはさらなる創造性を生む可能性があり、研修に幅が出ると思います。そういった流れでその他の研修先でも成功をおさめられたと思います。その経験が今回のランチでは十分感じ取れます。
料理構成の一番ポイントだと思ったのが「温度管理」それぞれ「熱いものは熱く、冷たいものは冷たく」というのは当たり前ですが、それにシェフは「いい温度」といいましょうか、「ほどよく温かく」が入ってるように思います。簡単にいえば「焼き芋」。アツアツでは味そのもがわかりにくいが、若干温くなると「甘味の種類」がわかりやすくなる。その料理がモワルーであったり、タルトであったりするわけです。
また具材とソースの関係、具材とスープの関係。シェイノの井上シェフのソースは伺ったときかなりの種類を頂きましたが、どれも全く違うソースの特徴を強調されている。そして濃度の管理がすごい。そのことを忠実に再現されている。もちろんその先には「トロワグロ」の流れがあると思います。ただ研修先の多さからすべてがトロワグロの影響とも言えないかもしれませんが。。。それ以上に森永シェフもオリジナルな部分もあるでしょうね。
大半が白いお皿。ソースの色が一番わかるやり方。反対にいえば綺麗な仕事をする料理人ほど白のお皿を使いたがるのかもしれません。とにかく何もないところに作品を作り上げようとする努力がみられます。また彩りをさりげなく付け合せで調整したりされています。なんとなくわかりますか?美味く見せる技がさえている。
高級食材がない。フォアグラ、トリュフ、キャビア。でも他の手間のかかる食材が豊富に使用されています。もちろん仕入れに新鮮さなどを吟味されているので、その三点以上に高額のものもあるかと思います。森永シェフには別の考えがあるのかもしれません。
最後に旨味を100%上手にコントロールされている。スープでは中華の上湯を彷彿とさせる洗練された抽出方法を想像しました。かといって具材から全部うまさがでたわけではないですね。そのあたりはもうすこしお聞きしたいところですが、「濃い味」ではなく「濃い旨味を引き出して若干薄味」みたいな。。。。表現しにくい(笑)とにかく巧みな技術が見えますね。
これだけ書くとさすがに時間がかかる(笑)
でも短所が見当たらないのですよ。。。
◎しつらえについて
非常にわかりにくい場所にあります。しかも蛸薬師通りの車の通る道にさえ標識がないです。しかし路地に入れば一目瞭然。溶け込んだ感じですが白い素敵なお店が見えます。玄関すぐ右側に調理場、若干美味しそうな匂いがこぼれているのは愛嬌かな。シェフは小窓が外と通路にあるのでしっかり確認されて会釈されます。なんとなく電車の車掌に挨拶するような不思議な出会いです。
私たち3人が伺ったときはだれもまだ来られてないので、承諾のうえ撮影させてもらいました。もちろん料理は撮影OKですが、音のする携帯やフラッシュはNGです。このあたりは嬉しいルールです。過剰に派手な装飾もなくセンス良く、壁もシンプルで採光が優れています。自然光も庭から入りますね。昼でも昼の感覚になれます。黒を基調とした家具や柱は統一感があります。天井や照明の配線もしっかり加工されているので、料理への情熱と同様なレベルで施工にも力が入っています。おそらく修業されたお店や神戸の経験も多分にあったかと思います。料理に集中できる環境です。
実はまだ稼働していない部屋があります。これは二階の個室。準備が整い次第予約対象にされるそうです。二階への階段が少々急ですが、会話の気密性が高く接待などに期待できますね。
◎サービスについて
サービスは長井支配人と奥様でお二人でされます。もちろんホールの仕事は長井さんで、奥様は玄関や経理、シェフへの伝達をされている感じです。当方の席が外へ向かって座る席なのであまり奥様の動きは見ることができませんでした。
一階の席は、その時私たち3人、隣に2人 もう一つの壁際に6人だったでしょうか。長井さんは実にうまくまわられていました。森永シェフの神戸時代「グランメゾン グラシアニ」からのご一緒されたということですが、一見バリバリのホテルのメートルドテルのような感じに見えますが、実はお話させてもらうと非常に柔軟でこの「タケコプター」の話でみなさん和みました(笑)内容はまた伺われたときに同じ説明があるのでそのときに感じてください。こちらが思いそうな話題を察知して、答えを想定してお話していただくのでさらに楽しませてくれますね。
東京では多くエンターテイメント的なメートルドテルはいますが、長井支配人は、たとえばこちらのつまらない「ボケ」「ツッコミ」にしっかり対応してくれるので、また違った魅力があるのかもしれません。とにかくユニークですべてのゲストに気を配っておられます。今回はグラスワインを頼んだ程度なのでワインの知識については未知数ですが、きっと期待していいと感じています。
奥様は恐らく裏方的な仕事をされているのでホールにはあまりでてこられませんが、笑顔の素敵な方で最後のご挨拶ですこしお話させていただきました。二階が稼働したときにまたポジションは変わるのかもしれませんね。とにかくシェフや長井さんをしっかりささえておられますね♪
このタケコプター。
これが長井さんを象徴しているのかも。。。
「遊んでください♪」
その言葉に癒されました(笑)
さてさて、予告編で登場した
さやえんどう
これを帰り際に皆さんとお話したとき、玄関外でつるに巻きついて見事に成っているのを見ていたら、支配人がちぎってわたしてくれました。奥様だったか、息子さんが店に来た時に、ちぎって「おやつ」にされているとか(笑)和みのお店ですよね。そんな日常的なお話で私たちも大笑い。このさやえんどうは無償で頂いてしまいましたが、お店の気持ちが伝わってきましたね。大事にポケットにしまって、家族にその時のエピソードを話してそのあとバリバリと生で頂きました(笑)
そこで思い出したのがお店のコンセプト
〇 上質でナチュラルなものをシンプルに… (公式サイトより)
築80年余の京町家を改装し、落ち着きのある空間で美味しい料理とワインを楽しんでいただく小さなレストランです。 高級レストランを目指すのではなく、シェフと食べ手の距離が近い楽しくてコストパフォーマンスの良いお店を目指します。料理はコースのみで、フレンチの垣根を越えて京都の旬をシェフ森永の感性で自由に表現したいと思います。
店名の『ラ・ファミーユ モリナガ』はフランス語で森永ファミリー。いわば家族で営むレストランです。フランスで出会った素敵なトロワグロファミリーの店のように親から子へと大切に受け継がれてゆく、温かく心のこもったレストランにしたいと思い名付けました。 どうぞよろしくお願い申し上げます。
森永 正宏
お店はこのコンセプトそのもです♪
このさやえんどうをいただいた時は、単なる偶然で頂いたもので、そのときの和やかな家族観は忘れることはできません。でもこういったお店との親近感やコストパフォーマンスを重要視してやっていくお店がどんなにあるのか。実際そんなに多くはないと思います。これだけの上質な料理とプロのサービスを提供できるお店は個人店、ホテルに至ってもなかなか探せない。ここはそんな条件を満たす重要なお店だと思います。
これまでイタリア優勢、東京フレンチ優勢などと言われた京都フレンチ、今はこのラ ファミーユ モリナガ だけでなく、私のリストには素敵なフランス料理店が増えてきています。そのなかで今ひときわ輝いてる森永さんのお店、是非皆さんも楽しんでくださいね!
2012/04/19
(追)恐らく始まって以来の長文になりました。
皆様 最後まで読んで頂いてありがとうございました!!
森永シェフ、長井支配人、奥様
素敵な時間に乾杯!